kaddish development store

2021.08.10

INTERVIEW : Takuya Shimazu

 

 

 

 

 

 



 

 

2020年のコロナ禍以降、ネット通販の買い物が加速する一方で実店舗の存在意義が問われている中、kaddishの店内をもっと力強く説得力のあるものに、その為の仕上げとして盆栽を置いてみたいと思いました。

でも立派な盆栽って値段も高いし、素人に育てられるの?と不安に思っていたところへ紹介して貰ったのが、盆栽家にして店舗等リースも行う島津拓哉さん。

kaddishの空間コンセプトと商品構成を理解した上で、季節のうつろいを意識しながら、いつも新しい提案をして下さる島津さんの盆栽を、私達は毎週心待ちにしています。

そして盆栽の入れ替えに来て下さるついでに訊く島津さんのお話がまたアツくて、つい長話をしてしまう事もしばしば。

そのアツいお話の片鱗だけでもお客さんに感じてもらえたら、と思い、当店でも展示中の「田上充克展」(8/11 (水)まで)のメイン会場で、島津さんが主宰する「GALLERY SHIMAZU」へお邪魔してお話を伺いました。

 

 

 

 

 

 



 

実際に島津さんへリースをオファーするまでは、ちょっとビビッてました。

樹齢何百年という時空を生きる盆栽屋さんに、時代性を商売にする洋服屋は、軽くあしらわれるのではないかと・・・。

 

「ネット通販が主流になりつつある今だから、敢えて実店舗を強化していきたいという思いが素敵だなと思ったことを憶えていますよ。

四季折々の盆栽に触れる事で、若いお客さんのバロメーターが上がったり、お店の在り方を感じてもらうキッカケになればいいと思います。

大手さんからは内観が淋しいから何か穴埋めに、とか、ファッション的に映える意味合いで注文が来ることもあって、それをビジネスとして引き受ける事もありますが、やっぱり生き物を扱ってもらう事なので、大事に世話してくれるのか、本当に思いがあるのかは篩にかける事もあります。

僕達の業界にも大手はあって、インパクトのある古木を沢山抱えてショールームにリースするところがありますが、僕自身はそうでなく、若木も置き方次第で映える、盆栽を置く背景や空間との調和を大事にしています。」

 

そもそも盆栽家を始めるきっかけは?

 

「10代半ばは料理人に興味があって、専門学校に通いながら飲食店でアルバイトをしていました。

働いていた蕎麦屋さんに千円くらいの松の盆栽があって、水やりしていたんですが直ぐに枯らしてしまって、銀杏の木を自分で買ってみたのがキッカケ。

それも3か月ほどで枯らすんですけど、その後、大きな盆栽展に行って、あらゆる種類の盆栽を見て感動しました。

1718歳でそこに目が留まるのは、古物商で店舗内装のコーディネーターをやっていた母親の影響はあったかもしれません。

それから、今はうつわ屋さんになってますが、当時青山に空間デザイナーさんがやってる苔玉のお店が、鉄の什器や石なんかと苔玉を一緒にディスプレイしてて。

空間とトータルで見せる今に繋がる視点が養われたかもしれません。

蕎麦屋さんで盆栽に出会い、青山のお店で空間としての見せ方を知って。

自分がやりたい事はこれだと思い、鉢にも入っていない苔玉を路上で売るところからスタートしました。」

 

苔玉から始めた当時と現在で、盆栽に対する向き合い方に変化はありますか?

 

「最初に力強い盆栽をトップ10順に見せて、当時はとにかく盆栽を通して自分をアピールしていた気がしますが、自分より年上の古木に触れていくうちに、今はたまたま僕の手元でお世話をしているだけで、自分が育てたという感覚は無いです。

そうして育った盆栽が、いつかは次の人に受け継がれていくので、僕が育てた盆栽を見て下さいという自我は消えていきました。

今は人と場所に係わる中で、最後に提案する事を大事にしてます。

例えばベテランの大将が居る店には力を抜いた盆栽が、大将のふるまいで見え方が変わるし、オープンしたての店には1年生の松だったり。」

 

 

 

 

 



 

盆栽家としての普段の生活にも興味があります。

 

「薬院のギャラリーと糸島に自宅兼アトリエを構えています。

アトリエは若い苗木から樹齢200年を超える盆栽を何百と育てていて、朝は剪定や水やり等のお世話をしていますが、糸島の山の中なので、暮らしの面でも沢山のやる事がありますね。

勿論、季節によってリースをお休みしてる鉢も沢山あって、桜なんてお見せするのは1年のうち10日間程度ですが、ホントは紅葉もキレイなんです。

「GALLERY SHIMAZU」は商談や企画展のスペースで、いつか糸島のアトリエを盆栽家として見せていきたいのですが、今は忙しすぎます(笑)。」

 

 

 

 



 

 

現在「田上充克展8/11 (水)まで)」を開催していますが、田上さんの作品と出会う経緯は?

 

「人生で初めて買った絵が田上さんの作品でした。

たまたま、あるギャラリーで見かけた田上さんの絵を、苔玉と一緒に飾りたいと思ったのがキッカケで、誰が描いたかも分からないまま、当時はお金持っていなかったから、ギャラリーの方に無理を言って、月賦で買わせてもらいました。

ギャラリーの方の紹介で田上さんのアトリエに連れて行ってもらい、その圧倒的な量とバリエーション、好きな事だけを突き詰めて生活している姿勢に感動しました。

とにかく色んなタッチの絵があるので、失礼ながら盆栽と同じ感覚で「この絵はこんなお店、この絵はこんな家に合うな」と勝手にイメージして楽しんでいたところから、盆栽と絵の空間を展示として見せる発想が生まれましたが、駆け出しの自分が田上さんに展示会をオファーする自信が持てるまで、年数を要しました。

毎日58作品を長年描き続けている田上さんが仰る「質を上げるには量をこなす事」が深く刺さります。

そういう意味では絵だけのお付き合いじゃなく、同業者よりも刺激を受け続けている存在で、自分自身の経験値が年々上がるほど、田上さんの凄さが身に沁みます。」

 

 

 

 

 



 

 



 

最後にこれからのプラン等ありましたら。

 

「近々では盆栽家数名と「福岡盆栽」という展示で、九州から盆栽を発信していく計画があります。

他にもリース業ではない盆栽家のプランは色々とあります。

あまり考え込まずに、今は前のめりで「あいつバカだね」と言われるくらいにやっていきたいですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 



 

島津拓哉


2003年より盆栽を始め、福岡市薬院に「GALLERY SHIMAZU」、糸島の盆栽園で活動。


盆栽リース、装花、店舗装飾、芸術家や工芸家とのコラボレーション等、ギャラリー業も行う。


Shimazu Takuya


GALLERY SHIMAZU


 

 

 

 

 

 

photo : Toshihiro Inaba


text: Yoshinori Yamashita


 

 

 

 

 

 

 

 

https://kaddish.jp/blog/36613

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