自家現像という言葉がある。
文字通りお家でフィルムを現像するわけだ。
カラーフィルムやポジティブフィルムはその性質上自家現像を行うことは難しい(やってる方は勿論いる)
しかし、モノクロは仕組みさえ覚えてしまえばフィルムの調子の為にも自分でやる方が良い事も多い。
LPL社製現像タンク(画像は拾い物)
こういうタンクの中にリールに巻きつけたフィルムを入れて、タンクごとシェイカーのように振り
撹拌、現像を行う。
僕はモノクロばかり撮っている人間だけれど、自家現像に対して苦手意識がある。
…いや正直なところめんどくさいのだ。
多くの作家が自分のトーンを求めて現像を繰り返し、秘蔵レシピを生み出す努力をしてきたのがモノクロ写真家の歴史だ。
それをわかりつつ、ついラボ任せにしてしまっているのは情けないことで、自分の作家としてのコンプレックスでもある。
LAB-BOX(画像は公式サイトより)
そんなことを思いながら、去年末Kickstarterでこんなものを見つけた。
LAB-BOXという名前の一種の現像タンクだ。
自家現像のめんどくさい部分を大半の面で克服していると謳っていたが、半信半疑。
日本に入ってきたら買ってもいいかなぐらいに思っていたのだが、もう半年前あたりから実は日本でも売っている。
通常の現像タンクが5000円前後すればよいところを、こいつは3万円が近い。
めんどくささを軽減するアイテムなのにその値段を理由に買うのを躊躇していたのだが、どうにも自分の写真を見返す中で
自家現像と手焼きをもう無視できないんだなぁと最近よく思う。
知り合いの画家が
「アクリルしか使ったことがないことがコンプレックスだった。岩絵の具を使えるようになって初めて画家になった気がした」
そういう旨のことを最近言っていた。
自家現像は僕にとっての岩絵の具かもしれない。
それをしたら上達につながる、とかそういうことではなく
自分にとっての避けられない壁が目の前に来ている気がする。
稲葉