警察によるジョージ・フロイド暴行死事件報道の度に思い出した、スパイク・リーの「Do The Right Thing」を久しぶりに観て、30年前の映画と現在の状況が恐いくらい変わっていない事を痛感。
暴力で戦う事に異議を唱えるキング牧師と、自己防衛の暴力は知性と訴えるマルコムXの、正反対の言葉(だが同時に両者が笑い合う写真と共に)をエピローグに使用するこの映画は、なにが「Right Thing」なのか答えを示さず、パブリックエネミーの曲と共に「目を覚ませ!」と問いかけて終わる。
人種差別問題に明確な意見を述べる程に感情移入できるわけじゃない日本人の僕が、それでも映画を観ながら思い出したのが、ウディ・ガスリーだ。
ウディのギターには「THIS MACHINE KILLS FACISTS(このギターがファシストを撃つ)」と書かれている。
デザイナーのクリストファー・ネメスが使っていたミシンにも、同じ文言が書かれていて、つまり洋服を作る事で社会の矛盾に立ち向かうという、ネメスの声明だろう。
そこにこそ可能性が、と僕は思う。
音楽が好きで、服が好きで、映画や絵や本などが社会の先生だった僕としては、創造や作品はあらゆる差別と無縁であるべきで、青臭いと言われようが、表現は人に訴え揺さぶりをかけ、やがては世界を変える力を持つと、本気で信じる次第。
山下