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2022.12.29

 

 

 

稲葉に「今年のベスト・バイは?」と訊かれてパッと出た答えは、服でもレコードでもなく、アメリカの黒人女性で初めてノーベル賞を獲った作家トニ・モリスンの「ソロモンの歌」でした、読了したばかりだったから。

虐げられた声なき人達の声と、亡霊や寓話による教示、家族や友達や恋人、人が生きる上でのおよそ全ての要素が全部込められた太っとい幹のある物語です。

実用書やノンフィクションはほぼ読まないけど僕、物語は常に何か読んでます。

実用書と違って物語それ自体は確かにすぐに何かの役に立たないけれど、自分の中の深いところに少しずつ沈殿していって、やがて自分の根幹となって、世界に対するものの見方になって表れてきます。

そういう意味では音楽もそうだし、僕にとってはファッションから受ける自由のインスピレーションも同じように、社会に相対する指標です。

今日、よく来てくれる若客が新年に発売予定の軍パンを見に来てくれて「これまでブランドのテンプレ的スタイリングばかりしてきたけど、今、イレギュラーなアイテムを混ぜて着るのが楽しい」と言ってくれて、そのファッションの芯に触れた言葉がすごく嬉しかった。

朝起きて出かける前に一番気に入っている服に袖を通す、または作業の一区切りのたび紙の煙草に火を付ける、でなければ一日の終わりはレコードに針を乗せる、でも何でもいいと思うんです。

個人店を営んでいると経済の後退が肌で感じられますが、皆が我慢を強いられ一様に下を向いている中、身を削って自分の儀式を守っている人達の側に自分が立っている事を、すごく気に入ってます。

出来る限り長くそうでいたいです。

 

本の事書こうと思っただけなのに、脱線してしまいました…

 

 

 

山下

 

 

 

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