稲葉が個人で撮りためた写真のデータを眺めていて、壁に刺した釘の作品が目に留まりました。
表面が欠け穴が開いた漆喰の壁には、今にも落ちそうに傾きながらも辛うじて壁に留まっている釘の、濃ゆい影が横に伸びている写真でした。
視点を更にマクロに、そのテクスチャに寄って見続けると、壁と穴と釘の輪郭が曖昧になっていきます。
それでふと思い出したのが、幼い時、自宅の2階の部屋の窓から差し込む日の光に反射してキラキラと光る埃をずっと眺めていたこと。
光はやがて滲み、白いハレーションになる。
当時、その現実から浮遊するような感覚に、不思議と心が安らぎました。
日常に潜むサイケデリック。
オモロって話しです。
山下